展示会のブース設営でやってはいけない装飾とパネルレイアウト
【中小企業の展示会出展でよくある6つの間違い】の中の【間違いその1】でもお伝えしたように、「せっかく展示会に出展するのだから、できるだけ他社よりもカッコいいブースを設営しよう!」という考え方は、よくある間違いです。
そこに明らかな戦略的な意図と予算があるのならば、それはそれで構いません。しかし、単にカッコいいブースを作ることが目的となっているのであれば、話は別です。
会場内を見て回ると、単に予算を掛けだけの展示ブースが本当に多いことがわかります。その理由の多くは、展示会に出展することで会社の元気さを証明する、言わば、見栄や体裁のために出展しています。
確かに業界の中でのアピールも、時には重要なことなのかもしれません。だだし、それは潤沢な予算のある大企業に限っての場合です。大企業の常識は中小企業にとって非常識ということが少なくありません。大企業が実践している多くの展示会の常識を中小企業が真似たとしても成果は伴わないのです。
例えば、大企業のブースによくあるような、派手な装飾と大きな展示スペースを用意したとしても、予算ばかりが掛かってしまい、費用対効果は見合わない結果が目に見えています。もしも、それらの要素が展示会成功の秘訣であるのならば、中小企業は到底太刀打ちできないことになり、展示会は大企業のためだけのイベントとなってしまいます。詳しくは後ほどご紹介する事例の中でお伝えしますが、戦略的にやることで、小規模・小予算でも大きな成果を出している中小企業は沢山あるのです。
中小企業の展示会ブースのダメな典型例
1.見栄えのいいカッコいいブース
ブースの設営を業者に依頼する際、なるべく設営コストを抑えながら、それでも出来うる限り見栄えが良くカッコいいブースに仕上げてもらいたいと思われるのではないでしょうか?
しかし、これは間違いです。見栄えが良くカッコいいブースでは返って人は集められません。全体的に統一感があり、洗練されたデザインで装飾されたブースには、引っかかりがないのです。引っかかりとは、来場者の注意を引き喚起させるための心理のことです。
ブースをキレイに仕上げることは最早どこの業者でも当たり前のように提案しており、実際に多くのブースで採用され実施しています。中小企業のブースが大企業のようなブースデザインを取り入れて見たところで、まったく効果はありません。例えるなら、地方都市では、ある程度見栄えのするビルであっても、それが都心の真ん中では誰も気に留めてくれないのと同じです。むしろ、ビルの合間に建つ古い一軒家の方が目立ちます。来場者にとっては、見慣れた景色の一部にしか見えないのです。
2.巨大看板、電飾、テレビモニターで「視覚」や「聴覚」へ訴える
壁面や天井一杯の迫力ある巨大看板。チカチカ・ピカピカ点滅する派手な電飾。動画や音声をフルに使ってアピールできるテレビモニター。これらは、人間の持つ五感の一部を刺激して、来場者を引き付ける効果を狙ったものです。
あなたもそうした装飾を施したブースに来場者が集まるシーンを見て、「やられた!来年はウチの会社でも取り入れなければ…」と感じたことはありませんか?
結論を言えば、マネする必要は一切ありません。いや、むしろ絶対にマネしてはいけません。なぜなら、そうした装飾を施したライバル企業の展示ブースが何十人、何百人の来場者を集めたとしても、そのほとんどは商談にさえ結びつくことはないからです。
「えっ!あんなに集まっているのに…」と思うのでしたら、それは認識を改める必要があります。もし、それらの装飾に効果があるのだとすれば、その企業の業績は鰻登りになっているはずです。しかし、現実はそんなことはないはずです。ブースの装飾で、大事な会社の取引相手を決めることは決してありません。来場者は、単に物珍しさと好奇心で集まっているだけなのですから。
展示会の目的は、集客の数ではないのです。むしろ、ターゲットとはかけ離れた来場者を集めれば集めるほど、本来の見込み客との商談のチャンスをみすみす逃してしまう結果に繋がりかねないのです。
集客できる展示ブースのパネルレイアウト方法とは?
では、小規模展示ブースでも、どのようなパネルレイアウトをすれば、来場者を引き付けられるのか?その具体的な設置方法について、中小企業の展示ブースに多く見られる一般的なコの字レイアウトをベースに解説していきます。
集客できるブースのパネルレイアウトは、「AIDMA(アイドマ)の法則」に基づいて設計していきます。【「AIDMAの法則」を活用し成功した展示会の具体的な事例】のページでもお伝えしたように、「AIDMA」とは、人間の購買心理や行動を表した、各段階の言葉の頭文字を取った言葉です。
その各段階は、次のようになります。
- ①Attention(注意)
- ②Interest(関心)
- ③Desire(欲求)
- ④Memory(記憶)
- ⑤Action(行動)
この「AIDMA」のパーツを、図のような箇所に配置し、ブースの訴求力を高めていきます。
パネル設置において、①の【Attention=注意】と③の【Desire=欲求】は、この中でも肝となる部分です。また、【Attention=注意】と【Desire=欲求】には、USPという「独自のウリ」をキャッチコピーにして見せることで、展示会に訪れた来場者の注意を引き、欲求そのものを上げることができます。
では、【Attention=注意】を取るためのキャッチコピーは、どこに設置すると効果的なのでしょうか。それは、来場者の目線になって考えれば自ずと答えが出ます。ブースの両サイドの壁に設置するのです。しかも、通りを歩く来場者の目に自然と入るように、高めの①番と③番の位置に設置します。
よくある間違いとして、コの字型のブースの一番奥の壁の②番の位置で【Attention=注意】を取ろうとする方がいますが、これは間違いです。遠くから歩いてくる来場者にとって、最初に目に入ってくるのは①番と③番のエリアなのです。②番の位置では、ブースの正面まで来なければ目には入らないため、来場者がそのまま通り過ぎてしまう可能性が高くなってしまうのです。
まずは、来場者の目にできるだけ長く映るよう、ブース両サイドの壁で【Attention=注意】を取る。これが展示会におけるパネルレイアウトの基本です。
【「AIDMAの法則」を活用し成功した展示会の具体的な事例】のページでもお伝えした、メッキ加工会社の事例では、①番もしくは③番の位置に30メートル先からでも目に入るような大きな文字で書かれた「クワガタにでもメッキできる技術」というキャッチコピーで【Attention=注意】を取りました。
「クワガタにでもメッキできる技術ってどういうこと?」といった注意を引かせ来場者を足止めさせました。そうした状態を作り上げた後、次はブース奥の②の位置にある【Interest=関心】のメッセージに目を止めさせ、「へえ、金メッキ以外にもこういう技術持っているんだ!」と興味を持たせ、ブースの奥へと歩を進めさせたのです。
さらに、ブースのどこからでも見える③の位置に【Desire=欲求】を配置し、欲求を高めていきました。ブースのどの位置に何を配置するかは、すべて来場者の視点に立って考えていかねばなりません。それぞれには役割分担があります。②の位置は、【Attention=注意】を取るためではなく、【Interest=関心】を引かせるための役割なのです。このことを理解せず、ただ何となく適当に配置しただけでは、人は思うようには動いてくれないのです。
④には【Memory=記憶】に該当するパンフレットや資料、展示物などを配置し、来場者が気軽に相談きるよう工夫します。⑤の【Action=行動】は、それまで①番から④番までの流れで気が高まり前向きな検討をしたいと思っている見込み客にスタッフから話し掛けたり、向こうから話し掛けられたりした時に後押しする役割を、スタッフが担うと良いでしょう。
ただし、これは、あくまで基本形です。あとはこの基本を基づいて、ブースの位置や形状に合わせて応用していくことになります。状況によっては、ブースの真ん中にわざと目立つ展示物を配置し、【Attention=注意】を取る場合もあります。
この様に、ブースの設計はすべて一連の流れの上で成り立っています。この様な、人の行動心理に基づいたブース設営があってこそ各所の要素が最大限活かされ、最終的な結果へと繋がるのです。
次のページでは、展示会スタッフの理想的な服装と人員配置についてお伝えします。
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これ1冊で、戦略的に展示会に出展し、成功へ導くための方法が体系的に理解できます。
■目次
第1章 展示会でよくある6つの間違い
第2章 展示会の成功事例
第3章 展示会成功のための戦術
第4章 ケーススタディ(出展までの生々しい企画)
第5章 成功への階段を登る!開拓までの4つのステップ
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著者 加藤洋一
企画・編集 株式会社 U.S.P
URL https://www.usptool.com
発行所 ミチテラス出版