展示会でアンケートが必要ない理由
展示会場を歩いていると、あちらこちらのブースで、懸命にアンケートを取る姿を目にしますが、結論から言うと、展示会でアンケートを取る必要性はありません。むしろ、中小企業においては、展示会でアンケートを取ってはいけないとさえ言えるのです。
では、なぜ展示会でアンケートが必要ないのかをご説明します。
アンケートでニーズをリサーチする?
アンケートを取る目的の中で、よく耳にするのがユーザーのニーズを探るためのリサーチ目的です。ユーザーが、今どんな製品やサービスを欲しているのかを把握するために、アンケートを用いて聞き出そうという試みです。そのための設問としては、「来場した目的」「興味関心事項」「展示物への感想」「現在、使用している製品・サービス」「導入したい製品・サービス」「自社への要望」などの項目が一般的ですが、展示会でアンケートを使ってこれらの内容を聞くことにはまったく意味がありません。
その理由は、以下の2つです。
- アンケートの前提が間違っている。
- 中小企業の目的には合わない
前述した設問中にある「来場した目的」「興味関心事項」「現在、使用している製品・サービス」「導入したい製品・サービス」などの項目は、すべて市場のニーズを調べるためのマーケティング・リサーチに該当する部分です。
マーケティング・リサーチとは、企業などが商品・サービスを提供するために顧客のニーズを知り、顧客にあった商品・サービスをつくるために行うことであり、要するに、今後の製品開発に役立てるための情報の把握が主旨となります。一方、アンケートは調査するための方法を指すのですが、ここで疑問を感じていただきたいのは、展示会でアンケートを取る目的です。
「ニーズを調べるためだよ!」という言葉が返ってきそうですが、それは本当に必要なのでしょうか?もし、仮に展示会に出展する目的が、市場のニーズのリサーチならば、それで構わないのかもしれません。しかし、一部の大企業ならいざ知らず、多くの企業にとっての展示会の目的は、新規開拓にあるはずです。特に、限られた予算の中で最大の効果を求める中小企業にとっては、尚更ではないでしょうか。
本来、アンケートが最も効果的なのは既にその製品を使っている顧客に対して行った時です。使い勝手や不満・要望など、製品の良い点・悪い点を聞き出すことで、強みを見つけ、今後の改良に繋げることができるからです。展示会のように、まだ自社の製品を使っていない人に、それらを聞くことはもちろんできません。であれば、展示会でアンケートを取る行為そのものが、まったく無意味であると言わざるを得ないのです。
「展示物への感想」も同様です。「自社への要望」に関しては、わざわざ、展示会でアンケートを取る必要はなく、営業が直接ヒアリングした方が、より良い回答が得られるはずです。
BANT条件をアンケートで聞き出す?
BANT条件とは、
- Budget(予算)
- Authority(決裁権)
- Needs(必要性)
- Timeframe(導入時期)
の4つの項目の頭文字を取った言葉で、アメリカで開発された案件を管理するための手法です。このBANT条件にある予算や決裁権、必要性、導入時期の項目をアンケートに盛り込み聞き出そうというのです。しかし、これにはかなり無理があります。
その理由は、以下の2つです。
- 本音は言わない
- 中小企業のやり方には適さない
BANT条件の中にある4項目ですが、アンケートを取る側からしてみれば、把握しておきたい情報なのかもしれませんが、果たして展示会場のアンケートで、この内容に正直に答えてくれるでしょうか?
答えはNOです。まだ、導入するかも分からない相手に対して、自分の手の内を晒すようなことはまずしないはずです。なぜなら、相手にとってそれらの条件を教えるメリットがどこにもないからです。BANT条件は、あくまでも営業が案件を管理するために考え出された手法です。営業が顧客に直接ヒアリングを行うことで、初めて知り得る内容であってアンケートで簡単に教えてくれる情報ではないのです。
さらには、予算が未確定であったり、最終決裁権者と製品選定担当者が異なっていたりするケースは多々あります。必要性については、【1ブース=1アイテム=1ターゲット】の観点から見て、聞くこと自体が無意味です。導入時期に関しては、展示会後にヒアリングすればいいだけの話です。大企業のように専属のマーケティング部門を持っていれば、時間を掛けてゆっくり案件を育てていくこともできるでしょうが、営業部門しか持たない中小企業で行うことは人的なリソースから鑑みても現実的とは思えません。
以上のような理由から、展示会でアンケートを取ることは必要ないのです。
それでも、どうしてもアンケートが必要ならば、商談できた人に展示ブースのどのような点に引かれたのかを聞きだせるようなアンケートを作成し、次回のブースづくりに役立てるのは良いでしょう。
次のページでは、展示会後に確実に成果に繋げるための適切なフォローアップの仕方についてお伝えします。
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■目次
第1章 展示会でよくある6つの間違い
第2章 展示会の成功事例
第3章 展示会成功のための戦術
第4章 ケーススタディ(出展までの生々しい企画)
第5章 成功への階段を登る!開拓までの4つのステップ
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企画・編集 株式会社 U.S.P
URL https://www.usptool.com
発行所 ミチテラス出版