展示会スタッフの理想的な服装と人員配置とは?
展示会で集客効果を高めるためのブースづくりについては、【展示会のブース設営でやってはいけない装飾とパネルレイアウト】のページでお伝えしましたが、集客した来場者と商談し、見込み客とするためには、さらにもう一工夫が必要になります。
来場者をスムースにブース内へ導き入れるために禁止規定
ブースを設営する際、人の流れを考慮した導線設計と雰囲気づくりはとても重要です。「AIDMAの法則」でお伝えした【Attention(注意)】や【Interest(関心)】を用いて、来場者をブースに集めたとしても、それは、まだ第一段階に過ぎません。
次なる段階は、「もう少し、詳しい話を聞いてみようかなぁ」と展示に興味を持った来場者と接点を持つために、ブースの中へと足を踏み入れてもらう必要があります。そうした際に、来場者が躊躇することなくスムースにブース内へ入っていけるような、導線設計と雰囲気づくり常に心がけておかねばなりません。
しかし、実際の展示会場でブースを覗いてみると、逆効果になるようなことを行っているケースを多く見かけます。そのため、私は展示ブースでの来場者の行動を妨げる行為すべてを「禁止規定」として定めています。そして、この「禁止規定」を参加スタッフ全員で共有し実施するようにしています。
では、展示会で行ってはいけない「禁止規定」には、どのようなことがあるのかを具体的にご説明します。
禁止規定①:ブースの間口を遮る
まず、大前提として、ブースの間口を遮ることは絶対にNGです。小間数の少ない展示ブースでよく見かけるのは、通路に面する展示ブースの前面に長テーブルを配置し、そこに展示物や資料を並べているケースです。自社の製品を少しでも目立つ場所にアピールしたいという気持ちは分かるのですが、これは禁止規定となります。
なぜなら、そのように展示ブース内と通路を遮った状態でのやり取りは、常に相手が外にいることになるからです。そのような状態で、いくら製品の説明をしたとしても、相手の課題や悩みの本音を聞き出すことはできません。
自社の製品がお客様の課題解決に繋がるかどうかの本音を引き出し具体的な商談へと進むためには、まずは、自分のテリトリー内に足を踏み入れてもらう必要があるのです。そのためには、ブース前の障害物や遮蔽物は排除し、興味関心を抱いたお客様が自然にブース内へ歩を進めやすくするための開放的な入口にしておくべきです。
禁止規定②:スタッフを多数配置する
たくさんの来場者がブースに訪れた場合であっても速やかに応対するために、ブース内やブース周りに多数のスタッフを配置しているケースを見かけますが、これも「禁止規定」としています。
なぜかと言うと、こうした人員をあちらこちらに隈なく配置することで、一人(一社)の来場者も取り逃がさないよう虎視眈々と待ち構えている気持ちが相手に伝わってしまうからです。ブース内へ一歩足を踏み入れようものなら、すぐさまスタッフが現れて声を掛けられるのではないか。そんな雰囲気が漂うブースには、お客様はとても怖くて近づけません。むしろ、威圧感や警戒感を与え逆効果になってしまいます。
スタッフの数は必要最低限にとどめ、気軽にブース内を見てもらえるよう配慮しましょう。人数の目安としては、1間につき1人くらいが適切です。
禁止規定③:スーツの着用
相手に警戒感を与えるような服装は避けねばなりません。時折、展示会場で上下ビッシリとスーツで決めたスタッフを配置しているブースを見かけますが、これは正直いただけません。スーツには信頼感を与える効果はありますが、展示会のような場所には不向きです。むしろ、警戒感や威圧感の印象の方が高くなり、特に男性のスーツの着用は、その影響が顕著に現れてしまいます。
まずは、ブースを訪れるお客様の警戒感を下げることを優先しましょう。そのための服装としては、ビジネスカジュアルを意識すると良いでしょう。ジャケットを着用せず、ノーネクタイにする。やむを得ずジャケットを着用する場合でも、黒や紺などは避け、なるべく淡い色に留めるなどを心がけるだけで、相手に与える印象は大きく変わります。
また、スタッフ全員でデザインを統一したポロシャツなどの着用はおススメです。もちろん、いくら警戒感を和らげるためといっても、全体的なトーン&マナーや清潔感などの身だしなみには充分気を配る必要はあります。
禁止規定④:男性スタッフが多い
ブースに男性スタッフしかいない。もしくは、男性スタッフの比率が高いのも警戒感を与える一因になり得ます。ブース全体の女性スタッフ比率を高めることで、相手の警戒感を自然と和らげる効果が出ます。男性スタッフの役目は、詳細説明など専門的知識を求められた場合などのフォローに徹するくらいが調度いいでしょう。
禁止規定⑤:積極的な声掛け
ブースの前を通りがかる来場者に対し、一生懸命に呼び込みの声掛けをしているケースを見かけますが、呼び込みは一切必要ありません。自社の製品を多くの人に知ってもらいたいという気持ちは分かりますが、呼び込み行為はハッキリ言って手間と時間の無駄です。
街頭で呼びかけられることを、好意的に捉える人が少ないように、呼び込み行為は展示会においても同様の印象を来場者に与えかねません。一方的な押し付けは返って逆効果に繋がります。相手に無理矢理アピールするのではなく、自発的に興味を持ってもらう。そういうことに、知恵を絞り労力を使ったほうが、より高い効果が期待できます。
また、ブース内でこちらからの積極的な声掛けは「禁止規定」になります。ブースに訪れたお客様が製品を手にしたり、じっと眺めたりしていると、すぐに声を掛けてしまう人が多いのですが、これはやってはいけません。
ご自身がショッピングされる時に、まだその商品が欲しいと思っていない段階で店員に声を掛けられたら、その店員の行為自体に鬱陶しさを感じ、買い物よりもその場から立ち去りたい気分になった経験が少なからずおありではないでしょうか。まずは、お客様にブース内を自由に見ていただく。このことをスタッフ全員で周知徹底しておかねばなりません。
ただし、お客様が興味を示し、詳しい説明を求めるような素ぶりやサインを見せた場合は、すぐさま対応できるよう常にお客様の反応と動きに注意を払ってください。声掛けはタイミングが肝です。警戒心を与えない距離感でお客様の動きを観察しながら、ここぞというタイミングでは躊躇せず声掛けをしてください。
禁止規定⑥:四角いテーブルと背もたれ付きのイス
商談用のテーブルは一番奥に配置します。その際、できるだけ商談スペースもオープンな雰囲気にしておきます。商談テーブルの数はあまり多くせず、二つくらいまでが適切でしょう。その際に置くテーブルは、必ず丸型テーブルにしてください。イスも背もたれが無いタイプの物を用意します。角型テーブルや背もたれ付きのイスはNGです。
その理由は、角型テーブルや背もたれ付きのイスの商談スペースに対して、お客様が警戒感や抵抗感を示すからです。少し考えてもらえれば、分かるかと思いますが、そのお客様が既存の顧客でない限り、基本的には初対面なのです。
何となく、製品に興味を持って立ち寄ったお客様にとって、いきなりお互いが真正面を向き合い対面する場に座るよう勧められても、「まだ、そこまでの気分ではない。」と感じているため、ほとんどの人が躊躇してしまいます。
何事においても、まずは、お客様に余計な警戒感を抱かせないよう配慮することは常に意識せねばなりません。そのためには、テーブルもイスも丸型にし、できれば飲み物やお菓子を置いておき、チョッとした休憩スペースに利用してもらうくらいが丁度よいでしょう。
これらの展示会での「禁止規定」をまとめると、
- お客様に警戒心を与えない
- 抵抗感を抱かせない自然な流れの導線設計
- オープンな雰囲気づくりを心がける
ということが必須になります。
次のページでは、展示会でアンケートを取る必要性についてお伝えします。
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第1章 展示会でよくある6つの間違い
第2章 展示会の成功事例
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著者 加藤洋一
企画・編集 株式会社 U.S.P
URL https://www.usptool.com
発行所 ミチテラス出版