展示会を成功させる企画コンセプトのつくり方
前のページでは、【中小企業の展示会出展でよくある6つの間違い】をお伝えしました。このページでは、展示会を成功させるための秘訣として、企画のコンセプトをどの様に決めていけばよいかをお伝えします。
展示会を成功させられるかは、事前のコンセプトづくりで決まる!
何かの企画を立案する際に、その企画が結果的に成功するか失敗するかは、事前のコンセプトづくりでほぼ決まります。このことは展示会においても変わりはありません。展示会への出展を企画する上で、どのようなコンセプトを作るかはとても重要です。
しかしながら、実際に展示会のコンセプトを作ろうとした場合、具体的に何を決めておくべきなのかを迷われることがあるかと思います。特に、初めて出展するともなれば、どこからどう決めていけばいいのかさえ分からないのではないでしょうか。
実際、展示会場内の企業のブースを覗いてみて気づくのですが、数ある出展企業の中でも、明確なコンセプトを感じられるケースはほとんど見当たりません。中でも、中小企業のブースでは、ほぼ皆無と言ってもいい現状です。よくあるような、他社を真似たブースづくりは目立つものの、そこからは、この展示会で何を目的としているのかがまったく見えて来ないのです。言い方を悪くすれば、「ただ展示会に出展しているだけ」としか思えないのです。
では、展示会を成功させるために、どのようにコンセプトづくりをすればいいのかを、順にご説明します。
展示会のコンセプトづくりに重要な4つの項目
展示会のコンセプトづくりをする上での最重要項目は、「目的」「商品選定」「目標」「メッセージ」の4つです。この4つの項目が網羅されていなければコンセプトとして不十分であり、展示会を成功に導くことは極めて難しくなると言わざるを得ません。
展示会のコンセプトづくりの4つの項目を、決定する順に整理していきます。
STEP1 目的を決める
まず、忘れてはならないことは、何のために展示会に出展するのかという目的です。
よくあるのは、手段そのものが目的になっているケースです。「展示会に出展すれば、何か商談のチャンスが訪れるかもしれない!」そんな、期待からとりあえず展示会に出展してみるという発想では失敗を招きます。なぜなら、これこそが展示会に出展すること自体を目的化してしまっている典型例だからです。
展示会は、あくまで目的を達成するための手段でしかありません。自社の売上を上げるために新たな販路が必要ならば、新規開拓が目的となります。そうした新規開拓をする上で、展示会が有効であると考えるならば展示会を活用すべきであり、もし、そうでなければ別の効果的な手段を選ぶべきなのです。
しかしながら、多くの企業が、この目的の部分が曖昧になっており明確化されていません。目的とは、最終的なゴールを意味します。会社として、展示会を通じて何を得たいのか?展示会に臨む前に、そのゴールをハッキリさせ、さらに、参加するスタッフ全員でその目的を共有しておく必要があります。
STEP2 商品を選定する
展示会の目的が決まった次の段階は、具体的な出展物の選定を行います。
これに関しては、【中小企業の展示会出展でよくある6つの間違い】の中の【間違いその4】でもお伝えしましたが、基本的には、【1ブース=1アイテム=1ターゲット】を守ってください。一つのブースで、あれもこれもとたくさんの商品をアピールしてはいけません。展示会の目的を達成する上でも、【1ブース=1アイテム=1ターゲット】に絞り込むことはとても重要です。
社内で取り扱うたくさんの商品の中からどれを選択するかは、目的の達成という観点で戦略的に鑑みる必要がありますが、大きくは新規製品と既存製品に分かれます。その際、戦略的に新製品の方が効果的であると判断できない限り、既存製品から選ぶことが前提になります。
では、多くの既存製品からどれを選択すればいいのか?
それは、「売れているモノの中から選ぶ」ということです。私が展示会のお手伝いをさせていただく際に時折あるのですが、「売れていないモノを展示したい」という相談を受けることがあります。ですが、これは絶対にやってはいけません。なぜならば、「売れないモノは売れない」からです。ただでさえ売れていないモノに来場者は興味を示しません。そんな展示物を選んでしまえば、展示会は大失敗。多額の費用を自らドブに捨てるような行為にほかなりません。
売れている商品には、売れている理由が必ずあります。多くの顧客から評価を受け支持されている看板商品でこそ勝負するべきなのです。弱い部分を補うのではなく、強い部分を伸ばし市場のシェアを高めていく。これこそが中小企業が展示会で取るべき戦略です。
STEP3 具体的な数値目標を決める
目的を達成するためには、目標が必要になります。そして、その目標は具体的でなければなりません。具体的な目標とは数値化されているということです。数値化された目標があれば、目的の達成度合いを測り常に把握することができます。また、数値化された目標はスタッフ全員と共有する上でも役立ちます。
ここで、ある企業の事例をもとに目標数値の決め方と有効性についてお話します。
D社は主に広告用のチラシ印刷を請け負う印刷会社で、販売商品として力を入れていたのは、印刷物を発注するクライアントに対し、チラシの反応率を上げるためのコンサルティングサービスでした。そこで、まずは展示会への出展を計画し、そのための具体的なゴールを設定することにしました。
この場合のゴールとは、展示会後の具体的な売り上げです。コンサルティングサービスの価格設定は100万円でしたので、1500万円の受注を売上目標とし、15社の受注を成約目標に掲げました。
過去に成約に至った経緯を調べてみると、個別相談からの受注が最も多かったため、個別相談が成約前の最終ステップとして適切であることが判明しました。
同時に、個別相談からの成約率も調べてみたところ、約5割という高い確率で受注できることも分かったのです。
その結果を踏まえ15社の受注を獲得するためには、見込み客にいくつのステップを用意する必要があるかを、入口から出口までの全体の流れとして設計することにしたのです。
受注までに必要なステップは、全部で5段階あり、展示会、資料請求、セミナー、個別相談、成約の順となります。この5段階のステップをゴールから考え設計し、ステップごとに必要な数字を逆算で割り出していくのです。
過去の経緯を調べてみると、最終ステップである個別相談からの受注確率は5割であることが分かったため、15社の成約を目指すためには、最低30社との個別相談が必要になる計算がたちます。同様に、各段階の遷移率をすべてはじき出した結果、個別相談の前段階であるセミナーには100社、資料請求は1,000社が必要であることが見えてきました。
そこで、1000社からの資料請求を得るための展示会として、19,000人の来場者が見込める『販促EXPO』を選ぶことにしたのです。このように、ゴールへの道筋がしっかり設計できていれば、おのずと出展する展示会も絞り込まれてくるのです。展示会は結果的に大成功を収め、D社は当初掲げたゴール(目標)を達成することができたのです。
この様に、展示会は目標を達成するための、あくまで入口手段として捉え、ゴールまでの全体設計をすることが必須なのです。
STEP4 メッセージ
【中小企業の展示会出展でよくある6つの間違い】の中の【間違いその5】でもお話したとおり、
展示会で来場者へのNGメッセージは、
- 社名
- 商品名
- 自社技術のアピール
です。
メッセージで絶対に外してはならない要素。それは「顧客目線」です。人は購買行動を起こすとき必ずメリットを求めています。特に展示会のように似たような業者や製品が集まっているような状況では、メリットがあるかないかで結果に大きな差が生じます。「何か役立つ情報はないか」と思っている来場者へ、「わが社が求めている技術・製品はこれかもしれない!」と感じさせるためには、使う側の顧客の立場になって考えることが必須なのです。
顧客の目線に立つということは、即ち顧客心理を理解するということです。購買行動における顧客心理はとても複雑そうに見えるのですが、それを知るための良い方法があることをご存知でしょうか?
その方法は、「アイドマの法則」と言います。「アイドマの法則」は、正しくは「AIDMA」と表記し、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが提唱した消費者の購買心理のプロセスです。
「AIDMA」は、購買行動段階を表した言葉の頭文字を取った造語であり、
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
5つの項目は、それぞれ購買行動の各段階に区分され、Attentionは「認知段階」、Interest、Desire、Memoryは「感情段階」、Actionは「行動段階」となっています。
これを、展示会に当てはめてみると、
- Attention(注意)=「えっ!?どういうこと!?」
- Interest(関心)=「わが社に役立ちそうなことがあるかも…」
- Desire(欲求)=「取引を検討したい」
- Memory(記憶)=「○○について相談してみよう。」
- Action(行動)=「前向きに検討したい」
となります。
展示会が成功するか失敗に終わるのかの鍵は、顧客目線に立ったメッセージにあると言っても過言ではないのです。
次のページでは、実際に弊社がお手伝いした企業の展示会の事例をもとに、展示会での「AIDMAの法則」の使い方と有効性を具体的にご紹介します。
「AIDMA(アイドマ)の法則」を展示会の集客に活用した成功事例>>>
売上74倍を達成した原動力『戦略的展示会出展法』小冊子
展示会を成功させるためのノウハウを冊子にまとめました。
これ1冊で、戦略的に展示会に出展し、成功へ導くための方法が体系的に理解できます。
■目次
第1章 展示会でよくある6つの間違い
第2章 展示会の成功事例
第3章 展示会成功のための戦術
第4章 ケーススタディ(出展までの生々しい企画)
第5章 成功への階段を登る!開拓までの4つのステップ
B5版 69ページ
定価:700円+税
著者 加藤洋一
企画・編集 株式会社 U.S.P
URL https://www.usptool.com
発行所 ミチテラス出版