中小企業の展示会出展で よくある6つの間違い
前のページでは、【法人営業の新規開拓を最大効率化する方法】として、法人営業の新規開拓の方法として知られている代表的な方法と、展示会の比較をしてみました。このページでは、中小企業が展示会を新規開拓の手段として有効活用していくために、展示会出展でよくある間違いについて説明していきます。
間違いその1.出展すれば見込み客が獲得できる
期待に胸を膨らませ出展してみたものの、隣のブースは常にたくさんの来場者で賑わっているのに、自社の展示には誰も興味を示してくれない。時折訪れるのは、見込み客には程遠い暇つぶし客ばかり。終わってみれば、結局何ひとつ成果を得られなかった、というような経験をされたことがあるのではないでしょうか。実際に、展示会場を見て回ると、この様な閑古鳥が鳴いている企業のブースをよく目にします。
実は、こうした展示会で成果を得られない企業のブースには、上手くいかない共通した理由があるのです。それは、展示会で新規顧客を獲得していくための戦略と戦術がどこからも感じられないということです。
展示会への出展経験が乏しい企業に見られがちなのは、「展示会に出展さえすれば、ある程度の見込み客は獲得できるだろう。」と安易に考えていることです。しかし、現実はそう甘くはありません。この展示会に出展する目的は何なのか?その目的を達成するためには、どのような企業に自社のどんな商品・サービスを伝えるのが効果的なのか? を、緻密に組み立ていかなければ、展示会で成果を上げることは叶わないでしょう。
中小企業が、展示会に出展する目的は受注獲得と売上アップのはずです。少なくとも、中小企業がこのことを全く考慮せず出展することはないでしょう。もちろん、出展に際しては相応のコストが掛かるため、事前にそれなりの準備をされているとは思いますが、ブースを見る限り、展示会に出展すること自体が目的となってしまっていると言わざるを得ません。
大企業は、将来の受注へと繋がる見込み客を掘り起こすためのマーケティング活動を絶えず行っており、そのための専門部署もあります。しかしながら、ほとんどの中小企業では、マーケティング部門を持たないため、思うように新規開拓活動が進まない現状にあるのではないかと思います。展示会はそうしたマーケティング部門を持たない中小企業にとって唯一と言ってもいい新規開拓の手段であり、普段の営業活動では接点のない業界・業種と出会う可能性を秘めているのです。
けれども数多くの出展企業を見てきた限りでは、「ただ出展しているだけ。」と思わずにはいられないブースばかりが目につきます。
間違いその2.カッコいいブースを設営する
「せっかく展示会に出展するのだから、できるだけ他社よりもカッコいいブースを設営しよう!」
これは、よくある間違いの典型パターンです。
ただし、そこに明らかな戦略的な意図があるのならば話しは別ですが、もし単にカッコいいブースを作ることが目的だとすれば見直すが必要あります。
会場内を見て回ると、単に予算を掛けだけの展示ブースが本当に多いことがわかります。その理由の多くは、展示会に出展することで会社の元気さを証明する、言わば、見栄や体裁のための出展です。
確かに業界の中でのアピールも、時には重要なことなのかもしれません。だだし、それは潤沢な予算のある大企業に限っての場合です。大企業の常識は中小企業にとって非常識ということが少なくありません。大企業が実践している多くの展示会の常識を中小企業が真似たとしても成果は伴わないのです。
例えば、大企業のブースによくあるような、派手な装飾と大きな展示スペースを用意したとしても、予算ばかりが掛かってしまい、費用対効果は見合わない結果が目に見えています。もしも、それらの要素が展示会成功の秘訣であるのならば、中小企業は到底太刀打ちできないことになり、展示会は大企業のためだけのイベントとなってしまいます。詳しくは後ほどご紹介する事例の中でお伝えしますが、小規模・小予算でも大きな成果を出している中小企業は沢山あるのです。
間違いその3.コンパニオンとノベルティを用意する
これも、よくある間違いの典型です。
先ほどの派手でかっこ良いブースの場合と同様、中小企業にとっては展示会の非常識になります。コンパニオンを配置し、ノベルティを配ることで名刺獲得数は増えるかもしれませんが、こうした形で獲得した名刺のほとんどは、結果として成約へと繋がる有効な見込み客にはならない可能性が大なのです。
どうしてもコンパニオンやノベルティが必要な場合は、戦略的な意図に合わせて使っていくことになります。例えば、この展示会の目的が、出来る限り多くの人に資料を配ることであれば、配るのは綺麗な女性のほうがいいのかもしれません。ただし、費用対効果に見合わないのであれば採用すべき手法ではありません。
間違いその4.たくさんの商品をアピールする
「展示会に出展する以上は、さまざまな来場者の興味や関心を引くために、できるだけ多くの商品をラインナップしておこう。」
このように、大抵の展示ブースは、複数の商品を展示し、すべての来場者に対して万遍なくアピールしようと考えてしまいがちですが、実は、この欲こそが、展示会が失敗する最大の要因なのです。
展示会を成功させる秘訣は至ってシンプルです。それは、【1ブース=1アイテム=1ターゲット】にすることです。こう説明をすると、ほとんどの方が、「せっかく多額の費用を掛けて、展示会に出展するのに、ですか?」と、いぶかしげな顔をされますが、ここで少し考えて欲しいのです。
そもそも、来場者のほとんどは、あなたの会社のブースが目当てではありません。どこかの会社に招かれていたり、すでに他社の製品に興味があったりしているから、足を運んでいるのです。もしくは、展示会は、単なる情報収集のための来場者が大半であり、例えるなら、大小様々な同業店が軒を連ねる中華街と同じなのです。
もし、あなたが店主なら、通りを行き交う人を、どうやってライバル店から自分の店へと呼び込みますか?
大型店と同じメニュー構成で勝負しますか?
恐らく、それでは太刀打ちできないはずです。きっと何か1点、これだけはどこにも負けないようなお店の看板商品を作って勝負するでしょう。
展示会も、これと同じなのです。人が興味を判断するために要する時間は、約3秒から5秒程度だと言われています。あなたは、その一瞬で相手の頭の中にメッセージを送り込むことができなければ、見込み客の興味を引くことはできません。そのためには、あれもこれも同時に伝えてはいけないのです。思い切って商品を絞り込み、その商品に興味のあるターゲットだけが反応してくれればいいと割り切り、ブースを専門化するのです。
【1ブース=1アイテム=1ターゲット】に絞り込むことで、商品のメッセージは一つになり、相手に伝わる貫通力は倍増します。さらに、一つのメッセージの方がより記憶に粘りやすくなるため、展示会後に「あ、あの会社か」と思い出してもらえ、後々の商談をスムースに運ぶことができるのです。
間違いその5.社名・商品名・自社の技術をアピールする
展示会に行くと、場内を歩く来場者から最も目立つ位置にある上部パネルに、「会社名」や「商品名」をデカデカと掲げているブースを目にします。せっかくだから多くの来場者に自社のことを知ってもらいたいという気持ちは分かるのですが、これは絶対にしてはいけません。
どれほどブースの装飾に費用を掛けたとしても、このたった一つの間違いだけで展示会そのものが失敗に終わる可能性が高くなります。業界内で充分認知されているブランドやネーミングであれば、来場者を引き寄せる効果はありますが、それは大企業の戦略です。中小企業が格好だけを真似てみたところで、思うようには集客できません。
大事なことなのでもう一度言いますが、そもそも来場者は会社名も商品名もまったく知らないことを前提として、戦略を練る必要があるということなのです。
では、上部パネルには「会社名」や「商品名」ではなく、何を載せるのかといえば、それはキャッチコピーです。そこに、「会社名」や「商品名」を載せる必要はありません。
キャッチコピーを目にした来場者がその内容に興味を持てば、その内容を確かめるため、例えあなたの会社や商品のことを一切知らなくても、まず間違いなくブースへと足を向けます。何を販売しているどんな会社なのかは、見込み客をブースに誘導した後でゆっくり伝えればいいのです。
自社の技術や製品の特長や機能をパネルに掲げているケースもよく目にします。「会社名」や「商品名」とは違い、一見効果がありそうな気もするのですが、キャッチコピーとしては弱いものがほとんどです。いくら自社の技術や製品の機能が優れていたとしても、それを使う側が理解できなければ意味はありません。単なる自己満足に終わってしまいます。
キャッチコピーには外してはならない要素があります。それは「顧客目線」です。人は購買行動を起こすとき必ずメリットを求めています。特に展示会のように似たような業者や製品が集まっているような状況では、メリットがあるかないかで結果に大きな差が生じます。
キャッチコピーは、「何か役立つ情報はないか」と思っている来場者へ、「わが社が求めている技術・製品はこれかもしれない!」と感じさせるための手段です。そのためには、使う側の顧客の立場になって考えることが必須なのです。
展示会が成功するか、失敗に終わるのか。その鍵はキャッチコピーの良し悪しに掛かっていると言っても過言ではないのです。
間違いその6.たくさんの商談をしなければならない
展示会の最終目的は、顧客を開拓し「売上アップ」に繋げることです。
そのためには、多くの見込み客を集め、より具体的な商談を増やすやり方が効果的、かつ効率的なのですが、ここで気を付けておかねばならない落とし穴があります。それは、結果を意識しすぎるあまり、ブースに訪れる来場者が少し質問をしただけで、「これは、すぐにでも取引に繋がりそうな見込み客かも!」と早とちりしてしまうことです。
後々冷静になって考えれば、まず取引に繋がらない相手であっても、展示会という独特な雰囲気から、まわりの状況が見えなくなり、過剰な時間を費やしてしまうことは往々にして起こり得ます。
また、個人的な興味から、自分のビジネスとは関係なく、やたらと質問をしてくる来場者への対応にも注意しておく必要があります。こうした行動は、単なる時間の無駄遣いばかりでなく、気付かないところで、実際の取引に繋がる確度の高い見込み客を逃してしまっているかもしれないのです。
このような事態を避けるためにはどうするべきなのか?
それは、ルールを作ればいいのです。展示会でどこまでのプロセスを実施するか、混雑時の応対はどうするか、などを事前に決めておくということです。仮に、展示会の目的を見込み客の開拓だけにフォーカスするならば、それ以上の商談は、展示会場では行わないようにします。そして、その成果を測るための指標を名刺獲得枚数と定めたら、その数値をクリアするために必要な項目を洗い出しルール化していきます。
1社に費やす時間は何分までにするのか、それ以上の詳しい説明を求められた場合はどう対処するか、など、いかに効率よく目標を達成できるかを一番に考え、展示会全体を最適化するのです。あとは、それらをメンバー同志で共有し、意思統一を図っておけば、混乱することなく展示会に臨めるはずです。
こうした事前の取り決めがなく、行き当たりばったりの対応になれば、展示会で成果を上げることは難しくなるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。
- 間違いその1.出展すれば見込み客が獲得できる
- 間違いその2.カッコいいブースを設営する
- 間違いその3.コンパニオンとノベルティを用意する
- 間違いその4.たくさんの商品をアピールする
- 間違いその5.社名・商品名・自社の技術をアピールする
- 間違いその6.たくさんの商談をしなければならない
これらは、いずれも大企業が行う展示会の手法です。中小企業が大企業と同じ土俵に立っても勝ち目はありません。中小企業の展示会の目的はあくまでも新規顧客の開拓です。
そのためには、【1ブース=1アイテム=1ターゲット】に絞り込む。このことを忘れないでください。
次のページでは、展示会を成功させる企画についてご説明します。
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これ1冊で、戦略的に展示会に出展し、成功へ導くための方法が体系的に理解できます。
■目次
第1章 展示会でよくある6つの間違い
第2章 展示会の成功事例
第3章 展示会成功のための戦術
第4章 ケーススタディ(出展までの生々しい企画)
第5章 成功への階段を登る!開拓までの4つのステップ
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著者 加藤洋一
企画・編集 株式会社 U.S.P
URL https://www.usptool.com
発行所 ミチテラス出版